「幻の国の話」



忘却のグラスに
私はどれほど多くの
私自身の血を
注ぎ込んできたことか

泡立つ血潮の
気泡の一つ一つに
幻の王国の
残骸が見える

グラスを覗き
映り込む
私は

かつて
地上のどこにも
存在しなかった
空想上の国の


気楽なバックパッカーだ


広場の噴水から
湧き上がる
暖かい血を
両手ですくい
空へバラ撒く

赤い太陽に照らされた
目抜き通りを
ひやかして

偶像市場へ
幼年時代を
買いに行く

着の身着のまま
夢も無く愛も無い
身軽で明るく愛想良く

ケチでは無いので
虚無だけは
いくらでも振舞う

どこの酒場でも
必ず誰かに奢り
陽気に歌い
グラスを覗き込めば


私は再び
私に返る


グラスの外にも
世界があり
夢があり愛があり

万有引力は私を縛り
友は肩に手を置き
私はその手が
酷く重たい

重さに押されて
私の涙は流れ尽し
軽くなった体重で
天使は命の値段を計る

悩み多き君の諦めが
虚空に無数のグラスを産み出し
時間がそれを一つ一つ切り抜く




みんな
正真正銘
聖杯のレプリカだ




忘却のグラスに
友の血を絞り
夢を絞り愛を絞り
魂を絞って
口付ける

何処かで誰かが死んで
死んだ誰かが生き返らない
誰かに謝りたかったのに
誰かが何処にも見当たらない


ああ君
そこの君


君はそこで鼻を摘まめ
呼吸を止めろ私を見るな

グラスを捨て血を取り戻し
大きく深呼吸して
私を抱きしめれば
君もやがて気がつくだろう


私の匂いに


君の顔が
歪むのを
私は見たくない

死はいつでも
人の頭に
この世で最悪の
香水の匂いを振り撒く







ご本人のコメント

「てか、佐藤さんの死因はなんですか?
川田さんの絵を見ると、飲みすぎで肝臓やられたイメージがなんとなくわいてくるなあ。
で、カエルさんも、飲むときは結構付き合ってるカンジ。」


「何でもいいから蛙男と佐藤の詩をくれ」とせがんだわたくしに快く素敵詩を下さいました。
死因?なんだろう・・・・・・・・。

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