ブレス・オブ・正義の味方 |
続いちゃってます。
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一方、黒羽の方も事態の異常さに(ようやく)気付き始めていた。ここは戦うべき場所ではあるが、自分の居るべき場所ではない。 そういう、ディープに入ってしまったのだけは分かった。 「あんた、ずいぶんと残弾数を気にするね。その銃は弾数が少ないのかい?そうは見えないが」 「・・・ジャンク用の弾丸が惜しい。あまり無闇には使えないだろう」 巨乳女はふうん、とだけ呟き、自分の銃をぞんざいに投げて寄こした。 「使いな。バムバルディだ。マガジンもたくさんある」 渡された銃は・・・やはり見慣れない名と形だった。 犯罪者(と、思われる)から物を譲渡されるのはしてはならないことだ。 しかし・・・やはり、極限状態ならば話は別・・・になるだろうか。 黒羽は、自覚こそしていなかったが、かなり動揺していたのである。 白鳥のように、普通の弾丸を試そうという考えすら浮かばない。 それは経験のせいでもあるが、隣に白鳥がいないせいでもあった。 柔軟な考えの出来ない男、黒羽は成り行きでその奇妙な銃を受け取ってしまった。 この銃を使うには、女がしていたように「そこ!」とか「これで!」とか「乱れ舞え!」 とか叫ばなければならないことをレフトハンドショットガンはまだ知らない。 |
黒羽さんのショットガンはオートマでした(汗)。 なので、ジャンク用に使っていたのはリボルバーだったという事に(滝汗)。 |
「何体ぐらい殺った?」金髪オカッパがぞんざいに訊く。 「ええと・・・30以上は。サビクイとかハオチーとかまでは数えてないから。アレは不法投棄じゃないし」 律儀に黒髪少年が言う。 他にも金髪オカッパは、色々と黒髪少年に報告書のことなどを指図する。そのやりとりを聴いているうちに、白鳥は何となく不愉快になった。 金髪オカッパは黒髪少年のことを「相棒」と呼ぶ。だが、どう見ても黒髪少年を顎で使っているのだ。 確かに剣術を見れば金髪オカッパの方が腕は上だ。 しかし・・・オレだって銃の腕はコウには敵わないけど、ちゃんとパートナーしてるぜ?(それ以上の事もしてます警部補) なのに、この二人はまるで主従関係だ。黒髪少年は自覚していないようだが、傍目から見ればそうだ。 なんだかなあ、と白鳥はため息をつく。こんなのは、ホントのパートナーじゃない気がする。 一人の男を思い出した。思い出したくもない、あいつ。 ああくそう。本格的に不機嫌になってきた頃、道が変わった。 「リフトの線路だ。どうする?ここを通れば何処かには出られるよ」 「ばぁか。無駄に歩き回る気かよ。待ってりゃリフトが来るさ。俺は最下層区なんかに行きたくないね」 金髪オカッパはひらひらと手を振り、線路の上に座り込む。 黒髪少年は、冷たい壁に背をあずけ、ジャンクの急襲に備える。 こんな時に、二人の関係が浮き彫りになるのだ。 白鳥は何となく黒髪少年に同情し、自分もベレッタを手にしたまま壁にもたれた。 |
なんかリュウ、目がうつろ。 |
「俺、リュウって言います。リュウ=1/8192」 「え・・・あ、オレ、白鳥香澄。」ようやく自己紹介ができた。 しかし、その名前の次の分数はなんなんだ?何かの番号なのか? 白鳥は警察官だが、彼らは少年兵のようにも見える。白鳥の疑問を別の形にしてリュウが口を開いた。 「シラトリカスミさんには、D値がないんですか?」 そう聞いてきた少年の目に、かすかな警戒心が宿る。 「D・・・値?それ、なに?なんかの階級?役職?」 「ああ・・・」リュウは目を瞑る。「トリニティでもなくて、ホントに、ここの人じゃないんだ・・・」 外の人間だから、と言われたことは幾度と無くある。だが、「ここの人ではない」と言われたのは初めてだ。 「D値っていうのは、俺たちが生まれた時に判定された能力値です。分母が小さいほど、優秀な人間です。ボッシュは」 座り込んでる金髪オカッパを見る。「1/64です」 絶望的なくらいの、開きがある。リュウというこの少年が内省的で、控えめに見えたのはそのせいだろうか。 しかし白鳥には、その「能力値の差」というのがピンとこない。 確かに黒羽のように射撃の天才はいる。自分の幸運度も認識している。 持って生まれた才能の上に何を加算するかは、本人の努力次第なんじゃないだろうか。 そんなことを、白鳥は言ってみた。 「シラトリカスミさんは、前向きですね。俺も、少しはそう思って努力してるけど・・・」 「白鳥でイイよ。だいたいさあ、努力なんてすぐに実るもんじゃないだろ。君、まだ若いし」 白鳥だってまだ二十一歳だ。だが、いつも署で年少扱いされているので、自分よりも若い少年に説教もどきをするのも、 なんだか悪くない気がした。 |
ぽつりぽつりと話をしていくうち、白鳥はリュウに好感を持った。可愛い後輩を持った気分だ。署では、いつまでたっても自分が後輩だもんね、と思う。 この際、白鳥が何処から来てどういう人間なのかは、リュウも気にしない事にしたらしい。ずいぶんと警戒心を解いて、ジャンク(彼はディクと呼ぶ)の話などをしてくれた。 砂城に生息するジャンクとは、性質も用途(?)も違うことから、やはりここは「自分の世界」ではないことは十分にわかった。 そして、リュウのこの質問がとどめだった。 「"地上"って、本当にあるんですか?空とか、植物とか」 「あるさ」白鳥は内心の驚きを隠して答える。「ここにも、きっと」 ここも砂城も地下世界だ。けれど、「地下」というからには、必ず「地上」も存在する。 「シラトリさんはきっと行ったことないと思うけど、下層区街の天井は、青いんです。空が青いっていう伝説があるから。少しでも、空を忘れたくなかったんじゃないかな。青く塗った人たちは」 砂城の「天井」を思い出す。あれも、擬似空だ。 「・・・うん、そうかも。実際、晴れてる時は空は青いしね」 「見たことあるんですか!じゃあ、やっぱり空はあるんですね!ここにも!」 白鳥が答えようとした時、ボッシュ=1/64が振り向いた。 「静かにしろ。・・・誰か来る。反対側の線路から」 |
白鳥さん、顔が何気にやらしそうですな。 わたなべ「何気にタラしてるんですね。無意識フェロモン男デスか?それともワザトラ(笑)?」 |
「準備が遅えよローディ」 とっくに待機済みのリュウに対して、ボッシュが吐き捨てる。 反論しようとした白鳥を、当のリュウが制した。 「ごめん。気をつける」剣を構える。それから、白鳥の方を見ずに小声で言った。 「ボッシュの周りには、二種類の人間しかいないんだ。シラトリさんみたいに不愉快に思うか、逆にへつらうか。彼のD値なら、うんと高い出世が期待できるからね」 つまり、警視やらに媚売るみたいなもんか。冗談じゃねえやと白鳥は胸が悪くなる。 「だからさ、だから・・・俺は三番目の種類の人間になろうと思っている。媚もしないし嫌わない。ボッシュは確かにクセがあるけど、それが彼の全てじゃない」 ・・・なんだか、赴任早々に桜庭に言われたことを思い出す。 リュウが、かつての自分に重なる。 「俺は、強くなって、ボッシュの本当の相棒になりたいんだ」 自分でも気付いていたのか。相棒と呼ばれながらも、対等でないことに。 自分と黒羽はどうだろうか。銃の腕は黒羽が上。階級は自分の方が上。 そういう問題ではなく、精神的に対等になりつつあると思う。 リュウが初めて笑顔を見せた。 「俺、ボッシュ好きなんだ」 その素晴らしい笑顔が、かつての自分にそっくりなのだと、白鳥は知らなかった。 |
本当はボッシュとリュウも描くつもりでしたがなんかこの香澄くんが気に入ったので彼オンリーな絵。ってか、出せなくなったブレス本の小ネタをこんなところでブチまける俺様って愚か者。ぎゃふーん。 |
大きな谷を隔てて線路が二本通っている。 足音は自分たちとは違う方の線路、つまり谷の向こう側から聞こえてきた。 安全靴を履いているような硬い音、裸足のようなぺたぺたという音。それに・・・聞きなれた黒羽の革靴だ。 刑事として訓練された耳は正確だ。 だが問題は足音ではない。同時に聞こえてくる声だ。 「あいさつがわりさ!これはどう?乱れ舞え!こいつはおまけさ!」 ・・・・・・・・銃声と共に聞こえてくるこれらの声が黒羽のように聞こえるのは気のせいか? ち ょ っ と 待 て 。 コウに会えたのは嬉しい。この「異世界」で会えるなんて殆ど奇跡だ。いや、同じディープの変動に遭っていたのなら幸運ぐらいで済む。 だが、コレは一体何事だ??? 「邪魔だよ!」 ・・・間違いない。姿はまだ見えないが、黒羽の声だ。 刑事と訓練された自分の耳を疑いたくなる気持ち満載の白鳥である。 |
わたなべ 「黒羽サン、ますたーしたんですかアノ銃を(笑)そいつぁちゃんちゃら可笑しいや(あたしは江戸っ子か)爆笑。」 |
話は少し前に遡る。 黒羽は巨乳女に渡された銃で、目の前に現れた巨大ジャンクを駄目元で撃ってみた。これが効かないなら、ジャンク用の弾丸が装填されたショットガンかリボルバーを使う。そう思って撃った。 ・・・とたんに、黒羽の口が勝手に叫んだのである。 「あいさつがわりさ!」一瞬自失する黒羽。 が、ジャンクは怯むことなく向かってくる。もう一度引き金を引いた。 「こっちに来な!」 ・・・また勝手に叫んでいる。なんなんだこれは。罠か。妙な薬か?! 白鳥なみにぐるぐる混乱してきた黒羽であったが、更に驚くべき事が起こってしまった。 本来、銃というものは銃口から弾丸が発射される物である。 それが、なぜか銃口が思い切りバキューム効果を発していたのだ。 周囲の雑多な物が黒羽の持つ銃(バムバルディ)に吸い込まれてくる。 巨大なジャンクこそあまり動かなかったものの、ジャンクの身体のいずこからか、妙な物体が黒羽のもとに吸い寄せらて来た。 う さ ぎ の ぬ い ぐ る み 。 なんじゃこりゃあぁ!と白鳥なら叫びだすところである。思わずそれをキャッチした黒羽に向かって、ぬいぐるみをとられたジャンクは怒り狂って突進してきた。 「まずい!一端逃げるよ!」 巨乳女が叫ぶ。スケスケワンピの少女の首根っこを引っつかみ疾走する巨乳女のあとを、慌てて追った。 「あたしとした事が!とんでもないスキルをスレッドしたままあんたにあの銃渡しちまったよ!」 「どういうことですか」 「あいさつがわりさ!→こっちにきな!っていうスキルを繋げると、特殊なコンボが発生するんだ」 「コンボ?」 「特殊効果だよ。あの場合、ディクの持ち物を盗んでしまうんだ」 黒羽は一瞬眩暈を覚えた。仮にも警察官が、窃盗を働いてしまったのだ。 「戻しにいかなくては」 「馬鹿じゃないの?!」一喝された。 それによく見ると、黒羽が「盗んだ」ぬいぐるみを、スケスケワンピの少女がたいそう気に入ったように抱きしめている。 香澄・・・香澄に怒られるな・・・「正義の味方」がすることじゃないって・・・。 黒羽はけっこう、不幸のどん底にいた。 |
これ描いた時、酔ってました。反省します。 |
引き金を引くたびに勝手に口が叫ぶ。 こんな大声、ベッドの中でしか出したことない(香澄談)。 だが黒羽は射撃の天才だし、戦いの場に於いて臨機応変に対処していくのには慣れていた。 ・・・そしてやはり、慣れてしまったのである。この銃に。 バムバルディは、本当に弾が底なしのようだった。 「撃ちまくっても問題ないよ」と巨乳女は言っていたが、本当にその通りだった。 黒羽が(叫ぶことによって)ちょっと冷静さを失っている間にもがんがん弾丸は発射されていたが、 マガジンを取り替える必要もない。 ・・・これはこういうものなのだろう。 自分の中で結論付けると黒羽は強い。そこらのジャンクを撃ち壊し撃ち壊し暗い線路を進んでいく。 叫んでいる言葉が微妙に女言葉だということに、黒羽は気付いていない。 |
まさっちが、この黒羽さんの物まねをしてくれました。藤岡弘入ってました。「なんか違うよう」と言ったら「私の中の刑事は桜井さんだ!」と決然と言われました。 ※桜井刑事とは「特捜最前線」に出てくる漢の中の漢刑事のことで、役者は藤岡弘。 わたなべ「ワタクシとしては出来れば速水さんあたりの声で叫んだツモリだったのに・・・」(笑) |
線路の向こう側から聞こえてくる足音は、どんどん近づいてくる。 「ジャンク拾いの連中か?」ボッシュは剣をいささか雑に構えた。 「いや・・・違う!あれはコウの足音だ!」 叫んだ白鳥に、ボッシュは怪訝そうな目線を投げる。リュウは、生真面目そうに白鳥の視線の先を見やる。 「さっき話していた、シラトリさんの『相棒』ですね?」 恋人だよ!と叫びそうになったが、青少年の教育の為にはよろしくないと白鳥は黙って頷く。 「コウ!オレだ!オレはここだぞ!」 だが、銃声でその声はかき消される。(因みに黒羽の妙な雄叫びでも消されいた) やがて線路の上に三人分の人影が現れた。際立って背の高いのは・・・やはり黒羽だ。 だが、影はそれだけではなかった。彼ら三人を追って来る、巨大な影。 「・・・なんだあ?あれ、パンタグリエルじゃんか」 ボッシュの声はいたって呑気。対岸の火事にしか過ぎないとでも思っているようだ。 黒羽が妙な事を叫びながら巨大ジャンクに向かって発砲する。横で、変なフードを被った巨乳女も銃を手に応戦し、さらに細っこい少女が「にゃー」とか言いながら火炎放射をしている。 巨大ジャンクは、それらを全てはじき返していた。 白鳥は思わずベレッタでジャンクを撃った。 ・・・予想通り、それは弾き返されたが、横から飛んできた弾丸を、黒羽は見逃さなかった。 「香澄・・・!!」 「コウ!援護する!どこが急所かわかんねーけど、とにかく撃て!・・・って、あんた、ショットガンはどうしたんだよ?!」 「い・・・いやこれはそのバムバルディと言って・・・」 黒羽の頭に、瞬時に浮かんだのは自分が窃盗をしてしまったことであった。黒羽は彼にしては珍しく、激しく狼狽してしまった。 |
わたなべ 「うふふ。大きいくせに、超ウ・ケ顔(^.^)♪かわうい♪」 |
「おい!金髪オカッパ!」 白鳥は叫んだ。「アイツの弱点はなんだ?!」 「人を身体的特徴で呼ぶな!」即座に怒鳴り返される。 「とにかく教えろ!お前は優秀な人間なんだろ?!リュウから訊いた。アイツの呼び名も知ってた。襲われてる人間がいる。だったら、少しはその能力を使え!弱点はなんだ?!」 普段の白鳥ならばこんな物言いはしない。だが、相手は明らかに民間人ではないし、同業者に近い気がする。第一、一刻を争う。この際言葉が荒くなるのも仕方ないだろう。 白鳥の剣幕と、「優秀」という言葉にボッシュは負けて、仕方ないという表情を作りながら説明した。 「正式名称パンタグリエル。強い魔力を持ってるから、並の攻撃は効かない。集中攻撃を仕掛けて、ヤツの絶対防御、アブソリュートディフェンスを破らなきゃヤツにダメージを与えられない」 ベレッタを構えて谷の向こうを見据えたまま、白鳥の思考は激しく回転する。 制限時間内に新車をぶっ壊すとボーナス得点がつく格ゲーがあったな。確かそれも闇雲に殴る蹴るじゃなくて、ボンネットを飛ばして中のエンジンを壊すと早くクリアできたはず。 「コウ!オレがそいつの注意を引き付ける!その間にショットガンで連続射撃をしろ!間をおかずに、一気にだ!」 白鳥はベレッタの引き金を引く。 |
川田、どーやら強い香澄ちゃんが好きなようです。 本家の方では、黒羽さんの方がしっかりしてらっしゃいます。 ちなみに、白鳥さんはベレッタ撃ってます。画面に入りきらなかったのです(T_T) |
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