- Epilogue - (コーモリ猫の場合)

「しかし奇跡だよな」
と、メフィスト2世は後で言った。
「悪魔くんは信じるって言ったけどさ。ありゃ半分やけっぱちだぜ」
「別にヤケになった訳じゃないよ」
悪魔くんは反論した。
「必死だったからね。十二使徒を見つける手がかりになれば、と思ったのさ」
「やっぱヤケじゃねえか」
そうかなあ、と悪魔くんは考える。
「誰もコーモリ猫がユルグを連れて来るなんて、考えもしなかったぜ」
アイツはたまたま運が良かったんだよ、とメフィスト2世は肩をすくめた。

そうだろうか。
運がいいだけでユルグを見つけられるものだろうか。
悪魔くんは、ふと立ち止まって自分の後ろを振り返った。
砂に帰したゴーレム。その砂の上を、今自分は歩いてきた。
残されているのは、自分の足跡だ。当たり前のことだ。
歩けば足跡が残る。
生きていれば、その軌跡が残る。
もう一度、前を見る。
使徒ではなく、「仲間」だと認識し直した悪魔くんの目に、彼らの後姿が映る。

彼らは、どんな「生」を歩いてきたのだろう。
おそらくは自分より遥かに長命な彼らは。
きっと、自分には想像もつかない歩みがあったに違いない。
悪魔の中では「みそっかす」「変り種」と呼ばれる彼ら。
ユルグは自分のどんな言葉で、覚醒してくれたのだった・・・?

無邪気にはしゃぐ彼らの中で、何故かコーモリ猫の笑顔が、いつもと違う気がした。
そしてこの事件から、コーモリ猫の「何か」が、徐々に変わっていった。


― 了 ―


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